第67章 向き合う心
次の日会ったローは目元のクマが凄いことになっていた。
思わず一歩後ろに下がるくらい人相が悪い。
「ど、どうしたの……?」
「気にすんな。実験で寝る時間が取れなかっただけだ」
そんなになるまでしなくても、と思うが彼にとっては仲間の命が懸かっている。
それは必死になるだろう、と思い直し黙って丸椅子に座る。
「今日は何をすれば?」
「実験の検証を行う。昨日色々調べて分かったことがある」
目の前に透明の液体が入った小瓶が置かれる。
「これはお前の血液から治癒効果のある成分だけを抽出した回復薬だ」
「えっ、もう出来たの?」
「仮ものだ。濃度の調整やより効果を高める調整はしなきゃならねぇ。とりあえず、採血の後お前それを飲め」
「え」
「実験の検証って言っただろ。大丈夫だ。動物実験は済んでる」
もう一度飲め、と言われ水琴は採血後大人しくその小瓶を口に含む。
味はなく、ただの水のようだった。
少し時間をおいて、再び採血を行う。
「……これ、どんな意味が?」
「服用前後の血液成分の変化を見ている。……やっぱりな」
二枚の検査結果を水琴にも見えるようにデスクに並べ、ローはある数値を指し示す。
「こっちがお前の。こっちが俺の検査結果だ。俺のはここの数値が変化してるだろう。対してお前は全く変化がない」
どうやら事前に自分でも服用していたらしい。
動物実験ってまさか自分?と思うがそこは今は突っ込むべきことではないと水琴はローの説明に耳を傾ける。
「薄々そうだとは思っていたが、お前の血はこの世界の人間にしか効果がない。世界を越えたことでお前の身体に何か変異が起こって治癒効果が付与されたわけではないらしい」
「つまり、もともと私の世界の人達の血はこの世界の人達にとってそういう効果を持ってるってこと?」
「そういうことだ。だからお前自身が大怪我してもこの回復薬は効果を発揮しない。気を付けることだな」