第67章 向き合う心
そろそろ約束の時間のため近くにいるかと思ったが、浜にエースは見えなかった。どこにいるのかと南の浜を目指しながら森の中を歩く。
そしてちょうど浜と小屋の中間辺り。今朝までは確かになかった広場を見つけ水琴は唖然とする。
「……何してたの」
「拠点づくり」
簡易的な小屋の前、何かの肉を焼き黙々と咀嚼していたエースに脱力する。
そんな広いスペースではないとはいえ、この一時間弱で木々を切り倒し更地にし、小屋まで建てていたというのかこの男は。
呆れたもののいいストレス発散になったのか、それとも時間が経ち頭が冷えたのか。
さっきのような不穏な空気は消えており、「どうだった?」とエースは水琴を見上げた。
「採血と問診しただけだよ。やっぱり異世界人だから?血液型とかも違うみたいで面倒そうな顔してた」
「ふぅん」
二本目の串に手を伸ばすエースに興味を惹かれ隣に腰を下ろす。
血を抜いたからだからだろうか。先程間食をしたというのにもうお腹が空いてきて困る。
「何食べてるの?」
「イノシシ。いるか?」
「食べる」
一本頂き口に運ぶ。
僅かに効いた塩味が美味しい。へにゃりと水琴は表情を崩す。
あっという間に水琴は一本平らげてしまった。
「明日はどーすんだ」
「また同じ時間に来いだって」
「へェ……」
「エースも来る?」
「いい。ここにいるからまた戻って来いよ」
「分かった」
あらかた片付け船へ戻る。
日が落ちるのと同時に二人もまた就寝した。