第67章 向き合う心
清潔に保たれた空間に、デスクには専門書が数冊並ぶ。
綺麗に手入れされた道具たちは几帳面に種類別に整理され、いつでもその役目を果たせるよう光り輝いていた。
彼が医者であることに誇りを持っていることがこの空間を見るだけでも容易に想像でき、失礼なことを言ってしまったなと水琴は反省する。
暫くしてローが戻ってくる。
器材を取り外し、自由の身となった水琴に「食え」とリンゴが放られる。
「十分は動くな。体調に変わりがなければ船を降りていい」
「ありがとう」
ありがたくリンゴを齧る。甘酸っぱい酸味が口内に広がり、身体に染み入るようだ。
これも、と続けて投げられたものを受け取り水琴は首を傾げる。
「お菓子?」
「ついでに奪ってきた」
一体誰が犠牲になったのだろうか。
おやつを奪われた、顔も分からぬクルーにそっと合掌する。
だが、倒れても困る。水琴はありがたく甘い匂いを漂わせる焼き菓子を頬張る。
十分後、特に問題のなかった水琴は船を降りた。
縄梯子まで案内してくれた大きな喋る白熊に抱き着くという(主にあちら側が被る)ハプニングはあったが、時間前に何事もなく船を降りることができ水琴もほっとする。