第11章 現実
「ドクさん!」
「水琴!どうした、怪我をしたのか?」
突然現れた水琴に目を見開くとすぐさま視線は身体を滑る。
「特に外傷はないようだが」
「何か手伝うことはありませんか?」
「…向こうに治療を終えたクルーがいる。世話を頼む」
水琴の剣幕に何かを感じたのか、船医は静かにそう告げ治療に戻る。
「はいっ!」
医務室の一角で寝ているクルーに近づく。中には午前中共に雑用を行っていたクルーもいる。
痛々しい包帯に顔が歪む。
恐怖を払うように、水琴は怪我人の間を走り回った。
怪我人は次々と運ばれてくる。
「なんでこんな……」
「あの霧のせいだ。奴ら、霧と共に現れやがって…」
「しかも視界が悪いのは同じはずなのに、奴らそんな様子も見せねぇ」
クルーの説明にどうしてこんなに苦戦しているのか理由を悟る。
きっとあれは悪魔の実の能力なんだろう。じゃなければこちら側だけがこんなに苦戦している理由が分からない。
しかしそこは天下の白ひげ海賊団。徐々に霧の中での戦いにも慣れてきたのだろう。怪我人が運ばれてくる数も減っていき、医務室の緊迫した空気も薄れてきた。
このままいけば勝利するだろうと水琴も安堵の息を吐く。
「…ぅ、あ……」
気絶していたクルーが気が付いたのか、うめき声を上げる。
「大丈夫ですか?今、水を…」
「違う…早くっ、隊長に…!」
「え……?」
水を取りに行こうとする水琴の腕をつかみ、クルーが起き上がる。
「船底に…爆弾を仕掛けようとしてる奴らが…早くしねェと、モビーが…!」
「!!」
クルーの言葉に顔が青ざめる。
どれくらいの規模か分からないが、もしも爆発すれば戦況も引っ繰り返るだろう。
「水琴、どうした?!」
「すいませんドクさん!少し外します!」
早くマルコに伝えないと。
甲板に出れば、先ほどよりも霧が薄くなっているようだった。
甲板を見まわしマルコを探す。
「マルコさん!」
青い炎を纏ったマルコを見つけ叫ぶ。
「水琴、なに出てきてんだよい!」
「船底に!爆弾が!!」
水琴の姿に気付き怒鳴るマルコだったが、水琴の言葉にすぐさま事態を悟る。