第11章 現実
組織というのはどこも同じということだろうか。
アイスクリームをつつきながらぼんやりと疲れた様子のエースを眺める。
ドォォオオオン!!
「な、何??!!」
突如、船を爆音が襲う。同時に激しい揺れ。
バランスを崩し椅子から落ちそうになるのを何とかこらえ、揺れが収まるのを待つ。
今の…なんだろう。
まるで砲撃を受けたみたいな…?
「敵襲か?!」
だらけていた空気が一変、一気に周囲が慌ただしくなる。
「エースさん、これ一体…」
「水琴は落ち着いたら部屋に戻ってろ!」
敵襲を告げる警笛と共にあちこちからクルーが現れ持ち場へ向かっている。
甲板へ向かうと言うエースに頷き返し、水琴は部屋へ戻ろうとする。
…しかし、これは。
「揺れすぎじゃない??!!」
さっきから揺れは収まるどころかどんどんひどくなっていく。
巨大なモビーディック号がここまで揺れるのだから、きっと外はすごい戦闘になっていることだろう。
怖いもの見たさというよりも、状況を知ることで少しでも安心したいという思いから水琴は窓を覗く。
「……霧?」
窓を覗けば濃霧が周囲を覆っていた。さっきまでは綺麗に晴れていたのに、グランドラインの異常気候のせいだろうか。
しかしこう霧が多くては様子が全く分からない。
少しでもよく見ようと霧の向こうを凝視していた水琴の目に、赤が見えた。
「……あ」
敵船で大きな赤い炎が燃え上がった。一瞬周囲の霧が晴れ、敵船で戦うクルーの姿が映し出される。
「エース……」
ついさっき出て行ったばかりなのに、もうあんなところにいる。
…いいのだろうか。自分は。
ここでただ終わるのを待っているだけなんて。
窓ガラス一枚隔てた向こうの戦いをじっと見つける。
赤は甲板を踊るように駆け巡る。
「……よしっ!」
何かを思いついた水琴は食堂を飛び出した。
向かうのは部屋ではなく医務室。
扉を開ければ、いつもよりもきつい消毒液の匂いが水琴を迎えた。
運び込まれる怪我人を看病するナースの間を抜け、この部屋の主を探す。