第2章 始まり
「おいおい。一体何やってんだ?」
さすがに気になり声を掛けるとちょうど井戸の傍でばかでかいタコを持ったサッチが「おォエース!」と楽しげに声を掛けてきた。
その周囲にいた船員たちもそれぞれ魚だったりただのゴミの様なものだったり統一性のないものを手にしている。
「いいところにきたな!お前もやってみろよ、おもしれーぞ!」
「何を。ってかそれどうしたんだよサッチ」
「井戸の噂きいてねェの?物は試しで手を突っ込んでみたらいろいろ出てくるわ出てくる…」
「ただ色々捨ててあるだけじゃねーの?」
「それが違うんだなこれが!覗いてみろって。物どころか水もないだろ?」
そう言われ覗きこめば確かに暗い闇が覗くばかりで手を伸ばしただけで何かをつかめそうな様子は見えない。
井戸の噂はあながち間違いではなかったらしい。
「さっきマルコにもやらせてみたんだけどよ!何だったと思う?」
「さァな」
「それがパイナップルだよパイナップル!いやァあの時のマルコの顔!お前にもぜひ見せたかった!!」
思わぬ答えにぶっと噴き出す。確かにそれは見て見たかった。眉を寄せ苦々しい表情を浮かべるのが容易に想像できる。
「で、エースなら何が出るかって思ってな!」
「なるほどな。どうせなら肉がいいなー肉!」
ほれ、と場所を譲られ一歩前に出る。無駄に肩を回し気合いを入れると、エースは井戸に腕を突っ込んだ。
何もないはずなのに腕が水に触れる。思わず「うお、」と声を漏らすとにやにやと様子を見ていたサッチが「何かあったか?」と声を掛けた。
「いや…急に水が」
「水?なんだ、魚とかか?」
「んー、特に何も…」
ぐるぐると水の中をひっかきまわす。そんなエースの腕に何かが触れた。
あったと思い勢いよくそれを引き上げる。
ざばぁと予想以上に大きな音を立てて“それ”は姿を現した。