第67章 向き合う心
辿り着いたのは診察室だった。さすが医者の船というべきか。その設備はかなり近代的で、元の世界と比べても遜色なく感じられた。
「ここに座れ」
示された丸椅子へ座る。
カルテを取り出し、ローはさて、と切り出した。
「時間がねぇからとっとと進めるぞ。まずは問診だ」
「はい」
「名前、年齢、いつ頃この世界に来たかを正確に言え」
その後もローに言われるままなるべく正確な情報を伝えていく。
特に血については細かく聞かれた。一番の目的のためこちらもなるべく分かっていることは全て伝えていく。
「なるほど。一滴でも猛毒を癒し、悪魔の実の能力を大幅に引き上げると」
欲しい情報は手に入ったのか、ローがカルテを脇に置く。
「実際に血を調べる。採血するから腕を出せ」
素直に差し出し採血を行う。
やはり医者としての腕もいいのか、全く痛まずにすぐに終わった。
簡易検査の結果を見てローが唸る。
「やっぱ異世界人だな。お前血液型は把握してるか」
「Aだけど」
「”A”ね……」
なにやらカルテに書き込み、再び道具を準備し始める。
「実験用の血液を採取しておきたい。今まで血を抜きすぎて気分が悪くなったことはあるか」
「特には」
「やや貧血気味だから鉄剤を出しておく。あともっと肉を食え」
「………」
「なんだよ」
「いや、思ったよりちゃんとしてくれるんだなぁって……」
正直もう少し雑に扱われることも覚悟していただけあって、丁寧な診察に水琴は拍子抜けする。
水琴の言葉にプライドを傷つけられたのか、ローは眉間に皺を寄せた。
「どんな理由であれ、患者はきちんと診る。確かに俺は海賊だが、その前に医者だ」
「そっか。ごめんなさい」
器材を腕に繋ぎ血を抜く。
少し外す、とローは部屋を出ていった。
手持無沙汰となり、水琴は部屋をぐるりと見渡す。