第67章 向き合う心
「エース、どこ行くの?」
浜から離れて行こうとするエースを呼び止める。
「……少し離れる。ここにいたら邪魔だろ」
「邪魔って……」
否定しかけ、甲板に集まるクルーたちの戸惑いの雰囲気を感じ取る。
確かに、彼らの心理的には良くないかもしれない。
「ビブルカードが少しでも焦げたら、一時間経ってなくても乗り込むからな」
「分かった。そんなことにはならないように気を付けるよ」
立ち去りかけ、何を思ったのかエースが再び振り向き足早に近づいてくる。
「んぷっ」
唐突に頭に被せられた彼のテンガロンハットに埋もれる。
遮られた視界をハットを持ち上げ確保すれば、まだ不機嫌そうなエースと目が合った。
「持っとけ」
「え?いいけど」
「じゃあな」
今度こそ踵を返しエースは森へと消えていく。
その姿が見えなくなるとハートクルーたちがほっと息を吐く様子が伝わってきた。
「いやぁビビった。いつ燃やされるかひやひやしたぜ」
縄梯子を上れば手を差し出される。
ありがたくその手を借り甲板へ降り立てば、手を貸してくれたクルーは明るい調子でそう言った。
「あ、俺はシャチ。よろしくな」
「私は水琴。よろしくねシャチ」
「相棒の為にありがとな」
「相棒?」
「小屋で寝てるの。ペンギンっつーんだ。俺の相棒」
シャチといいペンギンといい、あだ名なんだろうか。
名を模した帽子を被っているところ見るとコードネームのようなものかもしれない。
なんか可愛い、と思いながら再び差し出された手を握り握手を交わす。
「何やってる。早くしろ」
「あ、うん」
声を掛け船内へ消えていくローを慌てて追う。