第67章 向き合う心
二時間後、西の浜を訪れれば船の甲板にはたくさんのクルーが集まりこちらを見下ろしていた。
「うわっほんとに来た」
「白ひげってマジ?」
「誰かキャプテン呼んでこいよ」
ざわざわと騒ぐ様子にどうやら話は通っているようだと苦笑する。
改めて、水琴はその不思議な形の船をじっくりと見た。
黄色く塗られた金属を主とした丸みを帯びた船体。
海中も自在に進むことができる潜水艦、ポーラータング号。
今まで帆船を見ることが多かった水琴には興味深い船だった。
中はどうなっているんだろうとわくわくしていると、甲板のクルーが左右に分かれる。
「__来たか」
現れたのは彼らの船長。
浜に立つ水琴とエースを見下ろし、「上がってこい」と合図する。
「待て。お前はダメだ、火拳屋」
下ろされた縄梯子に近づく二人に上から声が掛かる。
名指しされたエースは明らかに不機嫌といった様子で「あぁ?」と上へ視線を向けた。
「そんな殺気を振りまいてるやつを乗船させる許可は出せねぇ。浜で待ってろ」
「__ふざけんな。てめェの指図は受けねェ」
「この船のキャプテンは俺だ。乗せるやつは俺が選ぶ」
水琴を挟みそれぞれが殺気を纏い威嚇する。
一触即発となる空気に水琴は慌ててエースを宥めにかかった。
「エース、私なら大丈夫だから。少しだけ待ってて」
「………」
「向こうだって仲間を助けたいはずなんだから、変なことにはならないよ。大丈夫」
水琴の言葉を聞き少しは落ち着いたようだが、頭と感情が一致しないといったところか。
盛大に舌打ちするとエースはぎろりと船上のローを見上げた。
「__一時間だ。一分でも遅れたら、燃やす」
燃やすって何を。まさか船ごと?
水琴ごとやりそうな勢いに絶対時間を忘れないようにしようと水琴は固く誓った。