第67章 向き合う心
「エースは、”異世界の民”である私は、嫌い?」
「………そういう聞き方は、ずるいだろ」
「うん、ごめんね」
大きなため息を吐き、エースはしゃがみ込む。水琴もその横に腰を下ろした。
葛藤している彼を黙ってじっと待つ。
「______約束しろ」
長い沈黙の末、エースはようやく絞り出すように口を開いた。
「たとえその血をうまく扱えるようになったとしても。
……勝手に、自分を差し出そうとすんな」
「うん」
「本当にわかってんのか」
「分かってるよ。大丈夫」
信用していないエースの瞳が恨まし気に水琴を睨む。
最大の譲歩をしてくれたであろう、彼に安心するよう微笑み返す。
「エースが許可しない限り、絶対にこの血は使わない」
エースが一瞬固まる。予想外の反応にあれと水琴は首を傾げた。
「……いや、そこは普通親父だろ」
「え?あれそっか。でもまぁ、いいじゃんエースでも」
「いいのか?」
「ダメ?」
「………いいよ、もうなんかそれで」
先程よりも大きなため息を吐くが、纏う雰囲気はずいぶんと違う。
ひょっとして呆れられてる?
「いいな。知りたいことが分からなくても、今回っきりだからな!」
「ありがとうエース」
満面の笑みを浮かべる水琴にエースはぐっと詰まる。
「ほんと、お前ってたちが悪ィ…」
「え?なんか言った?」
「お人好しにもほどがあるって言ったんだ」
「いやぁ、それほどでも」
「……褒めてねェよ」
照れる水琴に対して、エースは三回目の重いため息を吐いたのだった。