第67章 向き合う心
「お前な、ほんとどういうつもりだよ」
小屋を離れた森の中。
ようやく足を止めたエースに詰め寄られ、水琴は縮こまっていた。
これほどの怒りをエースから向けられるのはいつぶりだろうか。
ペンダント無くした時もかなり怒られたっけなぁ、と遠い目をしていると「聞いてんのか」と怒りを滲ませた声が水琴の意識を引き戻す。
「聞いてるよ。勝手に決めちゃったのは悪いと思ってるけど」
「そういう問題じゃねェだろ。そもそも、なんであんなこと言った」
「理由はさっき言った通りだよ。……私は、知りたいの」
自分がどういう存在か。
この身体に流れる血は、果たして呪いなのか祈りなのか。
「……お前は、お前だろ。違うのかよ、”水琴”」
「ううん。違わないよ。エースが、みんながそう言ってくれるから、私は”私”でいられる。
白ひげ海賊団の第一番隊隊長補佐で、伝令で、カゼカゼの実の能力者である私で」
だけどね、と思いつめた表情のエースを困ったように見上げる。
「__”異世界の民”である私も、私なんだよエース」
「……っ」
この世界とは異なる世界から来た証。
元の世界も捨てない、全て抱え込むと決めた水琴だからこそ。
”異世界の民”である自分も、また受け入れたいと思った。
だって、私は知ってしまったから。
無知のために力が及ばない、助けられるのに助けられない、その歯痒さと無力感を。