第67章 向き合う心
嵐のように去っていった二人の気配が完全に消えるのをローは待つ。
元の静けさを取り戻した小屋の前を通り、ローは中へと入った。
小屋の中にはベッドと作業机、道具の入った棚と申し訳程度の水周り。
感染予防にマスクと手袋をはめ、ローはベッドに横たわる人物へ近づいた。
「具合はどうだ」
「キャプテン……すんません、俺のせいで足止めくらって」
「そう思うなら一日でも早く治るようしっかり休め。飯は食ったか?」
「少し……」
追加の水と果物、消化に良い療養食を机の上へ置く。
「さっき、小屋の前に誰かいました……?なんか話し声が」
いつもの診察を始めるローにペンギンは弱々しく尋ねた。
「気にするな。余所の海賊がうろついてただけだ」
「海賊?」
「ここに来ることは無い。安心して寝ろ。
……ちっ、熱は変わらねぇな」
発症してから二日、熱は39度台を保ったまま下がる気配はない。
解熱剤や抗生物質も効果は一時的で、病原体が体内で変異するのか二度目は効かない。
外部から冷やす以外に今のところ手立てはなく、このまま熱が下がらなければ脳にもダメージがいく恐れがある。
じわじわと焦りが生まれ始めていた矢先、突然目の前に現れた二人の海賊。
「”異世界の民”か……」
子どもの頃、御伽噺として聞いたことのある”生きた万能薬”。
まさか自分の目で拝む日が来るとは。
「分かんねぇもんだな」
「キャプテン?」
「何でもねぇ。いいから寝ろ」
誤魔化すように、ローはぺしりと冷感シートをペンギンの頭に叩きつけた。