第67章 向き合う心
ちらりとエースを見る。彼もまた水琴の真意を探るようにこちらを訝しげに見ていた。
怒るだろうなぁ、と思いながらも水琴はここ最近胸に秘めていた”ある考え”を口にする。
「……私、”異世界の民”なんです」
「__っ」
水琴の突然の告白にエースが息を呑む。
「その名をご存知ですか?」
「……文献では、見たことがある」
「ならその血肉の効能についても知ってますよね。あなたの仲間を、助けることができます」
「おいっ、水琴!!」
怒声にも近い、エースの声が空気を裂く。
「お前何考えてんだ!」
「エース。いいから聞いて」
怒りに濡れるエースの瞳を見上げる。
勝手をして怒るのは当然だ。いつもいつも守ろうと必死になっている彼を見ているのだから、この流れに納得いくわけがないと重々承知の上で、それでも水琴にも譲れない想いがあった。
「__何が条件だ」
背後から、怪しむような声でローが問う。
「タダで人助けするほど白ひげ様もお優しくはねぇだろう。……何を企んでる」
「お願いがあります」
二つ、水琴は指を立てる。
「私の血は確かに万能薬ですが、そのまま使うのは危険なんです。なので、血を元にワクチンを精製する必要があります。”死の外科医”と言われるくらいなんですから、医術には長けていますよね?」
一つは、完成したワクチンを町の人にも配ること。
「あとは、私について調べたことを、教えてください」
「……どういうことだ」
「私は、あまりにも自分について知らない。……知らなすぎるんです」
全てを癒す万能薬も、扱えなければただの宝の持ち腐れだ。
どれくらいが安全に摂取できる目安なのか。
そもそもこの特性はどのような原理で成り立っているのか。
知りたいと思った。
いつか、この力が役に立つ日のために。