第66章 とある発明家の話
「私の負けだ」
よく通る声はその場にいる全員に聞こえた。
「約束通り、リオの自由を約束しよう」
「父さん……」
「今まですまなかったリオ。母さんが残した子だから、彼女の分までお前を幸せにしたいと、その一心でお前の心をないがしろにしていた。お前がそんなことは望んでいないと、気付いていたのに……」
膝をつき、父の瞳が同じ目線でリオを見つめる。
「これからは本当に何をするにも自由だ。発明も、安全管理をきちんとするのなら好きにしなさい。……もし、彼らについて行きたいというのなら、」
「ここにいるよ」
父の言葉を遮りリオは言葉を紡ぐ。
「ここにいる。ここで、開発がしたい」
「リオ……」
「それで、父さんの役に立つんだ」
「__っ!」
「父さん言ってたろ?向こう側の港町の発展が遅れてるって。小型船、開発したんだ。二人がいたから、出来たんだよ……」
「言ったろ?”コイツが本当にやりたいことを理解してるのか”ってな」
エースの言葉を受け、父はそっとリオへ腕を伸ばす。
それに応えるように、リオも大人しくその腕に収まるよう身を寄せた。
「リオ……っ」
「父さん、黙って出てってごめんなさい。だけど、オレ、あたしっ、どうしても父さんの役に立ちたくて……っ」
「いい。いいんだリオ……っ」
少しだけすれ違ってしまった親子は。
ほんの少しの騒動によりお互いを思いやる気持ちに気付き、ようやく歩み寄れた。