第66章 とある発明家の話
「旦那様!海賊共を逃がすというのは……」
「白ひげがこうやすやすと捕まっている事がそもそもおかしい。逃げようと思えばいつだって逃げられるだろう。なら、カードは切れるうちに切った方がいい」
水琴達が自力で逃げてしまえばリオの出した条件は意味を成さなくなる。
そういう事だろう。
「海軍には私から説明する。向こうも民間人がそう留めておけるとは思ってないだろうから、怪しまれはしないだろう」
「__待ってください」
当主の言葉に水琴は待ったをかける。
彼の静かな目が水琴を捉えた。
きっとこの人は娘想いの優しい人なんだろう。
彼女の身の安全と、これからの未来を案じていることが言葉の端々から伝わってくる。
島民からも支持を得て、それに応えようと努力を重ねる、”良い人”だ。
だが、だからと言って彼の言うことに納得するといえば、そうではない。
だって水琴は、”海賊”だから。
「腐っても海賊。民間人…それも子どもの恩赦で自由を得るなんて、まっぴらごめんです。
__私達の自由は、私達で掴みます」
グアラさん、でしたっけ。と水琴は綺麗な笑顔を彼に向ける。
「私と勝負をしませんか?」
「勝負…?」
「聞けばこの島、お酒が特産らしいですね。きっと島の方々もお酒に強いのでしょう」
「……おい、水琴お前まさか」
後ろでエースが恐る恐る何かを呟くが聞こえないふりをして、いい笑顔を振りまく。
「私と飲み比べしましょう。あなた方が勝てば、大人しく海軍に捕まります」
「はぁ?!」
水琴の提案にリオが目をむく。