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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第66章 とある発明家の話







 カツカツと床を叩く音が近づいてくる。

 薄暗い牢の前に現れたのは先程水琴達を捕らえた男、グアラだった。


 「本日夕刻に海軍がお前らを引き取りに来る」


 宣告されたタイムリミットに水琴は再会が叶わぬことを知る。


 「残された時間を噛み締めることだな」
 「グアラ待って!」

 甲高い声が牢屋に響く。はっとそちらを見れば、小綺麗な服に身を包んだリオが立っていた。
 

 「この人たちを逃がしてあげて」
 「お嬢様?!何を言って」
 「元はと言えばオレが……あたしが、巻き込んだんだ。家出なんてして、みんなに迷惑をかけたから」

 ごめん、と震える声で謝罪する。

 「水琴もエースもここで悪いことはしてない。見逃してあげて」
 「しかし、こやつらは賞金首で……」
 「もう家出なんてしない!大人しく淑女教育だって受けるし……発明も、やめるよ」
 「リオ?!」
 「心配してくれてありがとう、水琴、エース。だけどさ、ここらがやめ時だったんだよ」

 
 最後に実験が成功して満足さ、と笑うリオの姿は浜辺で飛び跳ね喜んでいた姿とは似ても似つかない。


 「………」
 「しかし、お嬢様。お嬢様のお気持ちは察しますが、彼らを逃がす権限は私には……」
 「いい。私が許そう」
 「っ旦那様!」

 現れたもう一人の男性にグアラが礼を示す。
 この屋敷の当主は半年ぶりに再会する愛娘を愛情のこもる眼差しで静かに見下ろした。


 「リオ。心配したよ」
 「……ごめんなさい」
 「無事で良かった。もう二度とこんな事はしないでくれ。いいね」
 「………はい」

 頷くリオに当主はほっと息を零す。
 その様子からは彼女を案じる気持ちがよく伝わってきた。

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