第66章 とある発明家の話
「楽しかったなぁ……」
最後の三日間は特に。
いつもの実験の最中、突然加わった二人の訳あり観光者。
まさか海賊だとは思わなかったけど、新世界へ戻りたいのだと、今までのリオの常識では考えられなかったことを当たり前に言ってのけた。
リオのすることを笑い飛ばすでもなく、認めないでもなく。
同じ目線に立って取り組み、喜んでくれた。
「聞いたか、あの話」
ふと少し開いた窓の外を通る使用人の声が聞こえる。
「あぁ、海軍が引き取りに来るんだろ」
「近くの海域でちょうど追っていたところだったらしい。まったく、お嬢様に何事もなくて良かったよ」
「ほんと、なんたって奥様の忘れ形見だからな」
「!!」
がばりとベッドから飛び起きる。
今の話は間違いなく、水琴とエースのことだ。
なぜ二人が逃げずに大人しく捕まったのかは薄々分かっている。
きっと会って間のない、家出なんてする馬鹿な子どものことを案じているのだろう。
放っておけばいいのに。
彼らには帰る場所がある。こんな所で、一人のガキのために海軍に引き渡されていい存在じゃない。
ある決意を胸に宿し、リオは部屋を出た。