第66章 とある発明家の話
自室に連れてこられ、リオは柔らかなベッドに身体を埋める。
毎日欠かさず交換される清潔なシーツは肌触りも良く、ふわりと花の香りが香った。
可愛らしい壁紙。綺麗な飾り物にたくさんの洋服。
誰もが羨むだろうその部屋で、リオが欲しいものは一つとして手に入らない。
昔から、物を分解して調べるのが好きだった。
最初は与えられた玩具。次に時計。オルゴールに、ピアノ。
分解するだけでは飽き足らず、仕舞いには自分でも作るようになった。
積み上げた知識を下地に新しいものを作るのは楽しかった。
いつか、父さんの役に立つ発明品を作るんだと、そう思っていたのに。
__女の子が、そんな危ないことはやめなさい。
成長するにつれ、増えた”女なんだから”という制止の文句。
比例して増える、息が詰まるような淑女としての教育。
違う。
そんな事がしたいんじゃない。
女は、”女の子らしく”しないといけない?
良い所のお嬢さんは、発明で油まみれになってはいけない?
じゃあ、いいよ。
”女”である必要なんて、どこにもない。
長かった髪をバッサリ切って。
口調を変え、体型が分からないような男物の服をまとって。
家を飛び出し、あの浜で開発を始めて半年。
正直もった方だろう。
いつまでもこんな生活が続けられるとは思っていなかった。
でも。