第66章 とある発明家の話
がっちゃん。
重々しい金属音を立て牢屋の扉が閉まる。
冷たい格子に手をかけ、軽く揺する。
ビクともしない様子に水琴はため息を吐いた。
「いやー。捕まっちまったな」
「……エース、楽しんでるでしょ」
そうじゃなきゃわざわざ大人しく捕まって牢屋に入れられるものか。
その後、水琴達はリオを保護しに来たというボディーガードの男達に連れられ反対側の港町まで来ていた。
別に逃げ出すことなど簡単だが、あれから会えていないリオが今どんな状態なのか気になり結局は水琴も大人しくこうして牢に収まっている。
「だけどまさかリオの実家がこんな名家とはな」
「いい所のお坊ちゃん、いや、お嬢様だったんだね」
連れられてきた家は豪邸と言っていい屋敷だった。
聞こえ漏れてきた会話から察するにこの島では結構な有力者らしい。家の主人は流通、土木、経営など多才に活躍し島の中心人物として頼りにされているのだとか。
「リオ大丈夫かなぁ」
「さっきの様子じゃ悪いようにはしないだろ。海軍に連絡されても困るし、今日の夜には出るか」
それまでにどうにか会えればいいけどな、と言うエースに水琴も同意とばかりに頷く。
「とりあえずは腹ごしらえだよな。すいませーん。飯まだ?」
「お前さっき食ったばかりだろうが!!」
なんだろう。
捕まってるのは私達なのに、なんだか同情してしまう。