第66章 とある発明家の話
「それで、造りかけの船はどこにあるんだ?」
「浜辺の作業場だよ。ここだといくら何でも手狭だからな」
こっち、とベッドから飛び降りたリオが小屋を出ていく。
爆発事故に巻き込まれて早々動き回り大丈夫かと思ったが、止める暇もなく姿を消したリオを見失っては大変ととりあえず二人は彼の後を追った。
港の方へ行くのかと思いきや、リオは大通りではなく寂れた裏道をずんずんと進む。
「ねぇ。こっちは港とは違うみたいだけど」
「港で作業なんてできないよ。仕事の邪魔になるし、さっきみたいなこともあるから事故ったら大変だしね。こっちに人気のない浜があるんだ」
やがて水琴の前に水平線が見えた。楕円形に窪んだ浜は小ぢんまりとしていて、周囲は崖に囲まれていることもあり一種の秘密基地のように感じられた。
端の方に並ぶ材木の中に埋もれるシーツをリオが取り去る。
そこから現れたのは不思議な形の船だった。
「これ…燃料船?」
まず風を受ける帆がない。
素材も木材よりも金属が主となっており、どことなく元の世界のクルーザー船を彷彿とさせた。
「もしかしてさっきの爆発はこれに使う燃料の実験だったのか?」
「そう!今新しい燃料の開発をしててさ。それに耐えられるエンジン基部の開発実験してたんだ。でもあんたらが使うなら帆船に改造してやるよ」
「新しい燃料ってどんなのなの?」
ちょっとした興味で聞いた水琴だったが、リオは聞きたいか?!と顔をきらめかせ水琴に迫った。
あ、なんかスイッチが入っちゃったっぽい。
「普通燃料って石炭や液体燃料だろ?でも長期間の航海じゃかさばるし第一燃料自体高価だ。客船とかで元手が取れるんならともかく普段使いには向かない。なら、ありふれたものを燃料に使えばいい」
何だと思う?と問いかけるリオは解答を待つこともなく両手を広げる。
「海水さ!海水を燃料にするんだ!」
「海水?」
思ってもみなかった単語に水琴はエースと顔を見合わせた。