第66章 とある発明家の話
よくある事なのか。それはそれで心配になる。
少し警戒していた様子だが、暫くして水琴の言う通りだと理解したのだろう。「手を煩わせて悪かった」と頭を下げた。
「オレはリオ。ここで船を造ってる。さっきのは燃料実験で失敗してさ。今度は上手くいくと思ったんだけど……」
「へェ。お前船大工なのか?」
船の単語にエースが反応し質問するが、リオは首を横に振る。
「知識はあるから造れるけど、正確には発明家だ。船以外だって必要があれば造る」
「より良いじゃねェか。なァ、お前おれ達に船造ってくれないか?」
「船?なんで」
「私達これから新世界に行きたいんだけど、ちょうどいい船がないの」
突然の話に面食らうリオに水琴は事情を説明する。
「新世界までの船ぇ?!そんな大型船すぐに造れるわけないだろ!」
「そんなでかくなくていいんだ。二人で操れるくらいのでいい」
「あ、でも出来れば部屋は二つ欲しいな」
「いやいやいや……ちょっと待って」
あっけらかんと言い放つ水琴とエースの言葉にリオは頭を抱える。
「二人?二人で新世界まで行くのか?」
「元々そっちから来たしな」
「は?じゃあここまで逆走してきたって?」
「私は違うけど、エースはそう」