第66章 とある発明家の話
路地の先は大きな袋小路となっていて、どうやら何かのラボのようだった。
端の方に掘っ建て小屋が建てられており、その周囲には水琴には使い方などてんで見当もつかない器具や部品が散らばっている。
敷地の中心には焼け焦げた跡があり、僅かに漂う煙が先程の爆発の名残として残っていた。
その傍にはやはり何に使うものかよく分からない、大きな鍋くらいの機械が無惨にも黒焦げになり転がり、謎の液体をぶちまけている。
爆発の原因はこれだろうかと横目で見ながら、水琴は小屋の中へと入った。
物が溢れかえる中、唯一まともに見えるベッドの上にエースがそっと横たえる。
「う……」
頭を打っていれば医者を呼ばなければならないかと心配していた時、微かな呻き声と共にうっすらと目が開いた。
「あ、気が付いた?」
「っ!!……うわっ」
目が合うと猫のように飛び跳ね後ずさる。
そして勢い余ってベッドの端から転げ落ちた。
「大丈夫?」
「あ、あんたら誰だ……?」
少年期特有の甲高い声が震える。
怖がらせないようにと、水琴は距離を取ったまま説明するべく口を開いた。
「私は水琴。道を歩いていたら貴方が転がり出てきたから、勝手だけど運ばせてもらったの。怪我は無い?」
「え?あぁ……大丈夫。よくある事だし」