第66章 とある発明家の話
「そっかぁ。やっぱりちょうどいい大きさってなかなかないよね」
「こうなったら一から造るか?」
「エース船大工の知識なんてあるの?」
「形は知ってるんだから何とかなるだろ」
それで何とかなるならば船大工は必要ない。
港近くに浮かぶだけならばそれでも何とかなるかもしれないが、水琴達が繰り出すのは偉大なる航路、グランドライン。
半端な船で新世界に帰れるとは思えない。
「少し時間はかかるけど、別の町にも足を伸ばしてみる?」
「そうだな。島の反対側に大きな港町があって、船はほとんどそっちから出るらしい。一度沖に出てぐるっと回るか」
大きな町に行くとその分賞金首だとバレる確率も上がるが、船を手に入れるためならしょうがない。
一応の方向性を定めた二人は港へと向かうため宿を出た。
「この島はお酒が名産なんだね」
港までの大通りを歩きながら、水琴は楽しそうに並ぶ店を覗く。
店には大小様々な酒瓶が陳列されており、初心者でも飲みやすそうなフルーティーな甘口から度数の強そうな辛口まで種類も豊富だった。
見た目にもこだわっているのか、瓶のデザインも仄かに色が着いたものや丸みを帯びたもの、四角いずっしりとしたものなど見ていて飽きない。
「心配かけちゃったし、親父さんにいくつかお土産買っていこうかな」
「道中かさばるし、もう少し近くまで戻ってからでいいんじゃねェか」