第66章 とある発明家の話
陽の光が差し込む窓辺に座り、水琴は誰かへ相槌を打っている。
その手には電伝虫。そこから聞こえてくる声に、水琴は柔らかく微笑んだ。
「__うん。そういうことだから」
『分かった。無理はするんじゃねェぞ』
「分かってるよ。気を付けて帰るから」
白ひげの労りの言葉に水琴は名残惜しそうに通話を切る。
「連絡出来たか?」
ちょうどタイミングを見計らうように扉が叩かれた。水琴が返事をすれば扉は静かに開きエースが入ってくる。
「うん。ありがとう」
「なんて言ってた?」
「無理はするなだって」
代わる代わる聞こえてきた声を思い出し、ふふっと笑みを零す。
「そういえばエース。船の方はどうだったの?」
「あー、難しいなやっぱ。二人で操作出来る大きさってなるとこの辺りじゃあ手漕ぎボートみてェのしかなくてな」
アラバスタを出て次の島へ辿り着いた水琴とエース。
あとは新世界へ帰るだけというところだったが、その前に船を調達する必要があった。
島と島の間が今回のように一日で渡りきれるものならばいいが、これから先そうそう上手くはいかない。
エースだけならば余所の海賊船にお邪魔して、ということも出来るが(実際逆走中はそうしていたらしい)水琴もいる中無用なトラブルの元は避けたいし、水琴自身も余所の船の平穏を脅かすのは出来れば避けたい。
というわけで、今二人は臨時の船を調達しようとしていた。