第65章 たとえ御旗は異なれど
じぃっとこちらを見つめるエースの視線から目を逸らす。
無理を言って付き合ってもらっていたのだ。これ以上我儘は言えない。
それに、水琴自身早くみんなの下へ帰りたいと思っていることも事実で。
「…ごめんねルフィ」
「えぇぇ?!なんでだよ!」
頼みの綱の水琴にまで断られ不満の声があがる。
そんなルフィの頭をエースが麦わら帽ごと抑えつけた。
かなりの強さにルフィの顔が埋まる。
「ふぁにすんら!(なにすんだ!)」
「いいかルフィ。おれは三年前この海を渡った。おれの仲間と、おれの船でだ」
思いのほか真剣なエースの目にさすがのルフィも大人しくなる。
「既にこの海を終えたおれがお前について行って一体どうしてほしいんだ?
こっちの方はあぁだ向こうの方はこうだって道案内してほしいって?」
「嫌だ!そんなんつまんねぇ」
「だろ?それじゃあただ黙って兄ちゃんに見守っててほしいって?
そんなのがお前が求めていた冒険か?」
「………」
「違うだろ。お前が望む冒険に必要なのはおれや水琴じゃない。
この船の、お前の仲間だ」
違うか?と静かに問うエースの言葉をゆっくり呑み込むように押し黙るルフィ。
「…あぁ、そうだな」
にっ、とルフィらしい笑みが覗く。
その様子にエースも引き締めていた表情をふっと緩めた。
「分かりゃいい。………で、さっきからお前はどうした」
「ごめん……ちょっと、ちょっとだけだから……!」
冷たいエースの視線を頭に受けながら、水琴は砂にうずくまる。
変な奴と思われてもいい。こんなD兄弟見せつけられてきゅんとしないなんて嘘だ……!