第65章 たとえ御旗は異なれど
「えっ……今夜?!」
入浴も終え、一同が集まる寝室で。
今後の動きを話していたナミの言葉にビビは思わず声を上げた。
「ま、おれも妥当だと思うぜ。もう長居する理由はねェからな」
「そうだな、海軍の動きも気になる」
既に戦争が収まってから三日が経つ。
この騒動に海賊が関わっていることは海軍も把握しているので、何かしらの措置を取る頃だろう。
現にこの三日の間に何度も海兵が麦わらの行方を聞きに王宮にも訪ねてきている。
これ以上誤魔化し居座り続けるのはお互いにとって良い影響になるとは思えない。
先程の『お友達』からの電話の件もある。
もしあの電話が本当であれば、既に沿岸は海軍によって封鎖されており、国全体に包囲網が敷かれていることになる。
「ルフィ、お前が決めろよ」
目覚めたばかり、そして船長ということもありウソップがルフィへと話を振る。
「よし!も一回アラバスタ料理食ったら行こう」
「「すぐ行くんだよバカ野郎!!」」
即断したルフィの言葉に総ツッコミが入る。
叩かれたルフィは不満そうだったが、現状を考えるとこれ以上の滞在は難しい。
話がまとまりそれぞれが出発のため準備をしようと動き出す。
「__ねぇみんな。
私…どうしたらいい……?」
一人席に着いたままのビビが苦しそうに言葉を吐き出す。
争いを収めようと奔走していた気高い王女の姿はそこにはなく、ただ二つの想いに揺れる少女の姿があった。
ナミがそっと近寄り膝を着き顔を合わせる。
「よく聞いてビビ。十二時間猶予を上げる」
これからルフィたちはカルガモ部隊でサンドラ河の上流へ向かい、『お友達』から船を奪い返す。
それから下流へ下り、明日の昼十二時ちょうどに東の港に一度だけ船を寄せる。
その一瞬だけが船に乗るチャンス。
「その時は歓迎するわ。……海賊だけどね」
「みんな……」
ナミを筆頭に麦わらの一味は笑顔でビビを見つめる。
本当は来て欲しい。今すぐに。
だがビビの立場と揺れる想いを汲み取り、危険を冒してでも最後まで悩む時間を与えた。
その想いを感じとりビビは俯く。