第65章 たとえ御旗は異なれど
「いっちちち…」
「よォルフィ。おふざけはもう終わりか?」
壁から落ちて倒れ込んでいたルフィをエースが見下ろす。
その目は冷たい。
「あ、エースか。そういや水琴もいたなさっき。入ってたんだな」
「へー。水琴いたのか。……見たのか」
「あァ、見た」
「お、おい馬鹿っ」
エースの様子に気付かないルフィが馬鹿正直に答える。
隣でサンジが蒼褪めた。
「そーかそーか……………即行忘れろ」
ボウンッ!と男湯から炎が上がった。
何が起こったかなんとなく察した水琴は遠い目をする。
「自業自得よね」
「パパ……」
ナミはやられたであろうクルーの心配は一切せず平然と風呂に浸かっている。
父の見たくなかった一面を見てしまいビビはがっくりとうなだれた。
「……二人とも、ありがとう」
落ち着いた頃、ビビがぽつりと呟いた。
「みんながいなかったら、私はきっとここまでたどり着けなかった。
ううん、たどり着けたとしても、きっとこの争いを止めることは出来なかった。
…本当に、ありがとう」
頭を下げる。その頭上にふふ、と水琴の笑い声が投げ掛けられた。
「違うよ、ビビ」
え、と顔を上げれば同じように笑う二人の友達。
「私達がいたから、この争いが止められたんじゃないよ。
最初に、ビビがいて。
この国を助けようと、一歩を踏み出したから。
だから、私達は出会って、ここに集ったの」
みんながいたから、ではない。
ビビがいたから、この奇跡は起こったのだ。
「そうそう。ビビがいなかったらわざわざ国の厄介事に介入しようなんて思わないわよ」
元々航路でもなかったわけだし、とナミが付け加える。
「ナミさん…水琴さん…」
「ビビは誇っていいんだよ。
ビビがこの国を救ったの」
流れる涙を湯気に隠す。
本当にありがとう、とビビは心の中でもう一度呟いた。