第65章 たとえ御旗は異なれど
かぽーん。
王宮自慢の広々とした女湯を水琴達は満喫していた。
「広いわねー。こんなお風呂のある船があればいいのに」
「きっとあるわよ、海は広いから」
「モビーのお風呂も広いよ。豪華さでは負けるけど」
ナミの背中をビビが洗い、その様子を水琴が風呂に浸かり眺めている。
「そうよ、この海にはきっと、まだまだ知らないことがいっぱいあるんだわ…」
ビビの呟きに水琴とナミは意味ありげに笑う。
その呟きからは、まだ見ぬ海への憧れが隠されることもなく溢れていた。
二人の視線に自分の発言がどういう意味を持つか悟ったのだろう。あ、あの…と言い淀むビビに交代、とナミが笑って告げた。
「……ん?」
何か視線を感じて水琴は見上げる。
ちょうど自分の背後、男湯に面する壁からぞろりと顔が覗いていた。
あまりの堂々とした覗きっぷりに叫ぶのも忘れてあんぐりと口を開ける。
「パパ?!」
その中に父の姿があるのを見てビビが愕然とする。
「あいつら……」
同じく気付いたナミが溜息と共に立ち上がった。
はらり、と身体を包むタオルを取る。
「幸せパンチv…一人十万ベリーね♪」
「ナミィ?!」
「ナミさん?!」
ナミの幸せパンチに衝撃を受け向こう側へ落ちる男性陣。
幸せパンチ、恐るべし。
お湯に肩まで浸かり避難していた水琴は、ナミの女性としての度胸の強さに畏敬の念を覚えた。