第65章 たとえ御旗は異なれど
「うっひょー!すげぇひれー!」
「おい見ろよルフィ!滝だぜ滝!」
「おぉー!」
アルバーナ宮殿の誇る大浴場。
その広さに初めて入るルフィが興奮しはしゃぎ回るのを残りのメンバーは呆れて見守る。
「おいおい、こけるなよ」
チョッパーを洗ってやりながらゾロは軽く忠告する。
「見ろよ!修行できるぞ修行!」
しかし興奮しているルフィにゾロの言葉など入るわけがない。
滝のように流れ落ちるお湯に頭から打たれ、修行僧の真似事をして遊んでいるのを見て溜息をつく。
「ほら、終わったぞチョッパー」
「ありがとゾロ!」
流してもらったチョッパーはぽてぽてとルフィ達へと駆け寄っていった。
「あいつ、自分が能力者だってこと忘れてんじゃねェのか」
自分も洗おうと蛇口に向かい直した時、隣から声がした。
見れば少し遅れてきたエースがルフィの方を見ていた。
その表情は呆れの色が混じっている。
その視線の先では力が抜け風呂に沈み込むルフィをウソップが慌てて助けていた。
「あの馬鹿…」
「出来の悪い弟が苦労掛けるな」
項垂れるゾロに対してくく、と笑う。
隣に座り身体を洗い始めるエースをちらりと盗み見る。
背中にある、白ひげのマーク。
賞金稼ぎだった自分が知らないはずもない、“最強”の印。
そんな男と肩を並べて風呂に入る日が来るとは、昔の自分も思わなかっただろう。
つくづく世界はどうなるか分からないものだ。