第65章 たとえ御旗は異なれど
前代未聞の晩餐会が終わり、夕刻。
「え、親父さんに?」
「あァ。とりあえず現状は報告しといた」
廊下の片隅で手紙を出したことをエースから告げられる。
「なんだ、言ってくれたら私も一言添えたのに」
ずいぶん心配させてしまったのだから、せめて謝りたかった。
「海軍の張ってる海域抜けたら電伝虫使えばいいだろ」
「それもそっか。早くみんなの声聞きたいなぁ」
もう長いこと聞いていない気がする。親父さんやマルコ、サッチなどの顔が浮かんでは消える。
「……何?」
視線を感じ振り向けばエースがにやにやと笑っていた。
「いや?ホームシックになってんじゃねーかと思って」
「…それはエース君の方なんじゃないの?」
「ばァか。なるかよそんなん」
「どうかなー。親父ラブだもんねエースは」
「それ言ったら水琴もそうだろファザコン」
「「………」」
睨みあうこと数秒。
ぷ、と同時に噴き出す。
結局はお互い言葉にしないだけで恋しいのだ。モビーディックが。
特に固い絆で結ばれている麦わら海賊団を見ていると、余計そう感じる。
「水琴ー!エース!お風呂行くけど、一緒に行かない?」
曲がり角の向こうからナミが声を掛ける。
行くー!と返事をしてからエースの手を引いた。
「さ、行こうエース!」
きっと、これが彼らと過ごす最後の夜だから。