第64章 それはまるで慈雨の如く
「あれは……」
空高く、クロコダイルの身体が舞っていくのが見える。
__そうか。じゃあさ!クロコダイルを、ぶっ飛ばしたらいいんだろ!?
この旅の初め。ルフィが明るい笑顔でそう言っていたことを思い出す。
「ルフィさん……」
彼が、勝ったのだ。
約束を果たしてくれた彼に、ビビの涙腺が緩む。
慌ててビビは袖で目元を拭う。
まだ涙をこぼす訳にはいかない。
泣くのは全てが終わってからだ。
「争いを、やめてください!!」
枯れる喉を必死に振り絞り叫ぶ。
しかし黒幕が消えてもなお、戦争は止まることがなかった。
砂が喉に入り咳き込む。
膝から力が抜け、ビビは壁に持たれるように膝を折った。
「うっ……うぅ……っ!」
もう、敵はいないのに。
これ以上、血を流すようなことはしないで。