第64章 それはまるで慈雨の如く
ルフィの渾身の一撃がクロコダイルの腹を打つ。
その勢いを殺さずに、ルフィは続けて蹴りと、更に拳を突き出した。
だんだんと速さと重さを増す一撃にクロコダイルはよろめく。
サソリの毒は確かにルフィの身体を蝕んでいるはずだった。
しかしそんな様子を微塵も見せないルフィにクロコダイルは吼える。
「どこの馬の骨とも知れねェ小僧が、このおれを誰だと思ってやがる!」
「お前がどこの誰だろうと!」
クロコダイルの叫びに被せるように、ルフィは力強く声を発する。
「おれは お前を 越えて行く!!」
頭上高く蹴り上げる。
舞い上がったクロコダイルは手に砂嵐を生んだ。
「”サーブルスペサード”!!」
巨大な砂嵐が生まれ地面に叩きつけられる。
砂が生む暴力はその場のものを圧倒的な力で地に這い蹲らせた。
身体にかかる強烈な重圧に耐えながら、ルフィは空気を思い切り取り込む。
身体を風船のように膨らませたあと、ギリギリと限界までねじっていき、一気に息を吐き出した。
弾丸のごとく飛び出していったルフィはあっという間にクロコダイルの間合いに入り込む。
最後の一撃になるだろう、両者は互いにトドメの一撃を構えた。
「デザート・ラスパーダ!!」
「ゴムゴムのストーム!!」
砂で出来た鋭い複数の鎌がルフィを襲う。
既に血の乾いたルフィの拳は容易に切り裂かれるかに見えた。
ルフィの拳が触れたところから、砂が崩れ弾ける。
砂漠の金剛宝刀を打ち砕いたルフィの拳は、暴風雨となりクロコダイルに降り注いだ。
その衝撃は何層にも連なる石の天井を破壊し、クロコダイルを地上へと吹き飛ばす。
地下に、天からの光が差した。