第64章 それはまるで慈雨の如く
__それで終わりか?ルフィ
薄れる意識の中、兄の言葉が聞こえた気がした。
声に導かれるように、ルフィは足に力を込め立ち上がる。
既に虫の息だったルフィが再び立ち上がったことに、クロコダイルは何か薄気味悪いものを見るようにルフィを振り返る。
「お前なんかじゃあ……おれには勝てねェ」
「……やっと絞り出した言葉がそれか」
ルフィの言葉をクロコダイルは笑い飛ばす。
いや、笑い飛ばそうとした。
「今にもくたばりそうな負け犬にはお似合いの虚勢……根拠もねェ」
立つだけでやっとのルフィに、クロコダイルは恐れにも似た想いを抱きつつあることを自覚していた。
そんな自分の気持ちを否定するためにも、クロコダイルはとどめを刺すためルフィへと一歩一歩近づいていく。
クロコダイルの気配が近づいてくることにルフィもまた気づいていた。
__いいなー。俺も早く行きてェ!
__お前はまだ十四だろ。あと三年待て。
走馬灯のように脳裏に浮かぶのは三年前、エースがドーン島を一人旅立つ場面。
__いいかルフィ。次に会う時は海賊の高みだ
__だから、それまでにもっと強くなれよ