第64章 それはまるで慈雨の如く
王宮広場での激突の後、姿を消したクロコダイルを追いルフィが辿り着いたのは王宮の西、葬祭殿。
隠し階段を降りた先の地下神殿にて、ルフィとクロコダイルは三度目の邂逅を果たしていた。
「__何を、分かってねェって……?」
ルフィの言葉にクロコダイルは低く呟く。
血で濡れる拳によりクロコダイルへの攻撃が可能となったルフィだが、左手の鉤爪に仕込まれた毒とここまでのダメージにより、その身体は徐々に力を失いつつあった。
それでも戦意は全く衰えず、ルフィは自分同様傷を負うクロコダイルへ真っ直ぐな視線を向ける。
「お前の目的はこの国にはねェ筈だ、違うか!?
他人の目的の為に…そんなことで死んでどうする!
仲間の一人や二人、見捨てれば迷惑な火の粉は降りかからねェ!
まったくバカだてめェらは……!」
「だからお前は分かってねェって、言ったんだ……」
クロコダイルの主張にルフィは同じことを繰り返す。
身体中のあちこちが痛みを訴える。
塞いだはずの傷口からは再び血が滲み始めていた。
けれど、あいつはもっと痛い想いを抱えて頑張ってるはずだ。
青い髪の仲間を想い、ルフィは乱れる息を何とか堪えながら言葉を紡ぐ。
「ビビは……あいつは、人には死ぬなって言うクセに、自分は一番に命を捨てて人を助けようとするんだ」
百万人という途方もない人数の民を救うために。
自分の持っている全てを国に捧げて、自分以外の全てを救おうとしている。
「放っといたら死ぬんだよ……お前らに殺されちまう」
「分からねぇ奴だ。だからその厄介者を見捨てちまえばいいとおれは…」
「死なせたくねェから!
”仲間”だろうがっ!!」