第63章 絶望の中に見える光
__晴れ渡る空に、一筋の影が見えた。
それは徐々に大きくなり、鳥の形となる。
見慣れたシルエットとその背に乗る人影に、ビビは閉じかけた瞳を大きく開いた。
「クロコダイルーーーーーーー!!!!」
「ルフィさん……」
高速で飛ぶペルが大きく旋回しビビの下へと回る。
地面に叩きつけられる前にルフィがビビを抱き留め、再び空へと駆け抜けていった。
「ふぅ、間に合った……」
「ルフィさん……ペル……!」
ルフィの腕の中でビビはその温もりに安堵の涙を零す。
生きていた。
生きてくれていた。
力強く脈打つ心臓の音にビビはルフィの服を掴む。
同時に張り詰めていた糸がぷつりと切れ、ビビはあのね、と弱った心をさらけ出す。
「広場の爆破まで、時間がないの!もうみんなやられちゃったし、私の”声”はもう…誰にも届かない……!」
どれだけ叫んでも、もうビビの言葉を聞いてくれる人はいない。
諦めずにもがいてもがいて、全てを否定されてしまったビビはクロコダイルの毒に完全に冒されていた。
「心配すんな」
絶望の淵にいるビビをルフィの力強い言葉が掬い上げる。
俯くビビの頭を温かい手が撫でた。
「お前の声なら、おれ達に聞こえてる」
だから叫べ、最後まで。
理想を。
掴みとりたい未来を。