第63章 絶望の中に見える光
爆発が轟く。
銃声と人々の咆哮で、広場は阿鼻叫喚と化していた。
「__広場への砲撃まであと十五分。まだまだ反乱の援軍はここに集まってくる。
てめェらの運命も知らず……爆破領域に次々とな」
「……!」
「”さっき”国王軍に広場の爆破を知らせていれば、たとえパニックになろうとも何千人、何万人の命は救えたはずだ」
「やめろ!止めてくれクロコダイル!!」
「すべてを救おうなんて甘っチョロいお前の考えが、結局お前の大好きな国民共を皆殺しにする結果を招いた」
クロコダイルの”正論”がビビの心を貫く。
その言葉の毒はじわじわとビビを侵食し蝕んでいく。
「二年間我が社へのスパイ活動ご苦労だったな。結局お前たちには何も止められなかった」
二年前、決死の覚悟で歩き始めた道だった。
ただ国のために。命の危険にさらされながらも、皆のためにと。
「反乱を止めるだの王国を救うだのお前の下らねェ理想に付き合わされて、無駄な犠牲者が増えただけだ」
望んだのはひとつの未来。
また、昔のように皆が笑い、支え合いながら暮らす日々の営み。
「教えてやろうか」
__ビビちゃん、私は国王様を信じてるよ
__ビビ様、よくぞお戻りで……!
「お前に国は救えない」
ビビの首を拘束していたクロコダイルの腕が砂となり崩れ落ちる。
重力に従い、ビビの身体は虚空へと投げ出された。
青空を背景にクロコダイルが遠ざかる。
数秒後に訪れる”死”を前に、ビビは悔しさに唇を噛んだ。
零れる涙が粒となり宙へと消える。