第63章 絶望の中に見える光
それはもうあなたにしかできない!
ずっと伝えたかった言葉をようやくビビはコーザに伝える。
風が吹く。砂混じりのざらりとした感触。
「__それをおれが黙って見てるとでも思ったか……?」
ビビの背後に現れ、凶器を振りかざそうとするクロコダイルにいち早く気付いたコーザは背中の剣を抜こうと手を回す。
それを振りぬく前に、ビビとクロコダイルの間に黒い風が割り込んだ。
ギィィンッ!!
「チャカ!!」
「何度も何度も……」
「ゾオン系の底力を舐めないでいただこう……っ」
それでもぎりぎりの状態なのだろう。傷のあちこちから血が滲み目が霞むのをチャカは野生の力と燃える意志の力で捻じ伏せる。
「コーザ、ビビ様…思うままに。
まだ私にとて、数分の足留めくらいはできましょう……!」
「チャカ……」
幼い頃剣の稽古を付けてくれた師でもある男の背を見つめ、コーザはそれ以上かける言葉が見つからず踵を返す。
宮殿を出ていこうとする二人をクロコダイルは追うべく走り出そうとした。
その前にチャカの渾身の一撃が振るわれる。
砂になり避けようとしたクロコダイルだが、僅かに服の端を刃が切り裂いたのを見て大きく背後へと飛んで避けた。
「………」
血に濡れたその切っ先は、まさにチャカの命を燃やし生まれたクロコダイルにとっての最凶の武器。
「__我、アラバスタの守護神・ジャッカル」
武器を構え、チャカは最期の瞬間まで守護者としてあろうと眼前の敵を見据える。
全ては未来の、この国の”誇り”を守るが為。
「王家の敵を、討ち滅ぼす者なり……!」
「……そういうのを馬鹿っていうんだ……」