第9章 白ひげクルーとの日常 5日目
「…おれに?」
「昨夜サッチさんに教えてもらいながら作ったんです。見た目はちょっと崩れちゃったけど、味は悪くないはず…」
水琴の言葉を聞きながら箱を開ける。
そこにはエースのトレードマークである鮮やかなオレンジのテンガロンハットの砂糖菓子がちょこんと乗っていた。
小物まで細かく再現されているそれは、水琴が言うように少し形が歪んでいる。
しかしそんな事気にならないほど、その出来栄えは素晴らしかった。
「すげェな、食うのがもったいなくなっちまうくらいだ」
「ちゃんと食べてくださいよ!せっかく作ったんですから」
「…あァ。ありがとな」
さっきのサッチの言葉の意味がようやく分かる。
自分がいなくてもうまくやっていけている水琴に対して少し寂しい気がしていたが、こうやって離れている間も自分のことを考えていてくれたのだと知りエースの気持ちは軽くなった。
一口かじる。
甘い甘い砂糖菓子は、優しくエースの口の中で溶けていった。
「……ん。うめェ」
「よかった」
にっこりと、水琴が嬉しそうに笑う。
「__この数日、どうしてたんだ?」
「あ、聞いてくださいよ!それが……」
楽しそうに語る水琴と、それに楽しそうに相槌を打つエース。
「あーあ。またしばらくお預けか。つまんないの」
それを遠巻きに眺めながらハルタが呟く。
そんなハルタを横目で見ながらイゾウは口を開く。
「別に混ざりたいなら混ざればいいだろうが。水琴も拒まねェだろ」
「…それもそっか。おーい水琴!俺も混ぜて!」
「うおっ!ハルタ?!」
「あ、ハルタさんおはようございます」
「ハルタ隊長が入るなら俺もー」
「よっす水琴!今日は花壇世話しにいかねェのか?」
「また大富豪やろうぜ!」
ハルタをきっかけにクルーが数人集まる。
いつもと同じで、少し違うモビーでの日常が始まっていこうとしていた。