第63章 絶望の中に見える光
「能力者の力を向上させる”悪魔の美酒”…そいつとプルトンが揃えばおれの国家は安泰だ。
世界政府にも後れは取らねェ」
「水琴さんをなんだと……!」
「使えるもんは人だろうが”道具”だ」
ビビの憤りを一蹴するクロコダイルはどうなんだ、と答えを待つ。
「一体どこでその名を聞いたのかは知らんが、そのありかは私にもわからんしこの国のどこかにそんなものが実在するかどうかさえ定かではない」
「……成程。その可能性もあるとは思っていた。確かに存在すら疑わしい代物であることはおれも承知だ」
ところで、と目的の答えが得られなかったにしてはやけにあっさりとクロコダイルは話題を変える。
「今国王軍が群がっているそこの宮前広場…今日午後四時半、つまりあと三十分で強力な砲弾を撃ち込む手はずになっている。
直径五キロを吹き飛ばす特性弾だ」
「!!??」
突如放たれた言葉の爆弾にビビは頭の中が真っ白になった。
……広場に、爆弾。
直径五キロが吹き飛ぶ?
「そんなことをしたら……!」
「嬉しいだろう?お前は散々反乱を止めたがっていたからな。おれの計算によればあと二十分もすりゃ反乱軍はそこの広場に到達し戦いを始めるだろう。宮殿を破壊するなんて遠回しなことをするより本人たちを吹き飛ばしてやった方が手っ取り早い」
綺麗に片付いた後異世界の民を手に入れ、プルトンのことはゆっくりと検証すりゃあいい、と吐き捨てるクロコダイルにビビは衝動のまま走り出そうとする。
それを隣のチャカが必死に押しとどめた。
「どうしてそんなことができるのよ!あの人たちが一体あんたに何をしたっていうの!!」
「下らん……」
怒りを滲ませたビビの視線も冷たく流し、クロコダイルはさてMr.コブラ、と再びコブラ王へと向く。