第63章 絶望の中に見える光
「さっきとは質問を変えよう。……ポーネグリフを記した場所はどこにある」
「__私がその場所を教えれば……!」
「んん……?」
コブラは交渉を持ち掛けようとするが、クロコダイルの視線に思いとどまる。
奴相手に交渉など、無意味だと悟ったからだ。
「いや……案内しよう」
「クハハハハ!さすがは名君コブラ!利口な男だ!」
高笑いを上げるクロコダイルに対し、ビビの隣で沈黙を守っていた男がチャキリと武器を構えた。
「ビビ様……私はもう我慢がなりません」
「チャカ……!」
「お待ちください、チャカ様!!」
クロコダイルへと切りかかろうとしていたチャカを第三者の声が止める。
ミス・オールサンデーの能力で閉じられていたはずの門が外側から勢いよく開かれた。
門前に集まっていた兵らの歓声を受け、ばらばらと足音が乱入する。
「ツメゲリ部隊!」
「お前たち……よせ!この男に手を出すな!」
「国王様…貴方を死守することが我ら四人の使命。手を出さんと言う訳にはいきませぬ」
護衛団の中でも精鋭の四人、ツメゲリ部隊が武器を構えクロコダイルへと対峙する。
増えた戦力にクロコダイルは紫煙を吐き出した。
「随分と人気者らしいが……お前ら、見逃してやるから、家へ帰れ」
「そうはいかん。我らには退けぬワケがある」
荒い息を吐き、四人の身体が盛り上がり不可思議な模様が現れる。
その変容にチャカはまさかと表情を険しくさせた。
「そのアザ……!お前たち、まさか!!」
「チャカ様……我等ノ勝手ヲオ許シクダサイ……
デスガ知ラシメネバ……」
「チャカ!みんなの様子が変!」
「奴ら……一時の力を得るために、”命を削る水”を……
”豪水”を飲んでいる……
もはや、数分の命……」
助からぬ、と絞り出される言葉にビビは息を呑む。
「ウア゛アアアアアアッッ!!!」
咆哮と共に四人が一斉にクロコダイルへと飛び掛かる。
奴に、全ての元凶に。
知らしめるのだ。
この国の”痛み”を。
この男に。この国の。
「「「「 ”怒リ”ヲ!! 」」」」
四人の命を込めた一撃は、さらりと砂を撫で掠ることすらなかった。