第62章 ここにいる意味
北ブロックはしんと静まり返っていた。
だが通りの向こうから聞こえてくる怒号や銃撃音から、ここまで戦火が及ぶのも時間の問題だろう。
猫一匹見当たらない通りをビビを先頭に水琴達は駆ける。
「止まれ貴様ら!」
前方に国王軍の設置したバリケードが見え、水琴らを不審に思った兵が槍を構え叫んだ。
少し手前で水琴達は足を止める。
「この北ブロックを抜ければ宮殿しかないぞ!この事態を分かっているのか!」
「戦いに関せぬ者はすぐにこの町から離れろ!」
「その宮殿に用があるんです。お願いです、通してください」
息の整わないビビの代わりに水琴が言葉を伝える。
しかし不審な三人組に兵たちの警戒は解けずにいた。
顔で白ひげだとバレないようにと、水琴とエースはフードを深く被っているので当然といえば当然だ。
「__この人たちの身元は私が保証します」
「何を言って……」
「っビビ王女?!」
顔を上げたビビを認めた兵はようやく彼女が我らが王女だと気付いたようだった。
ざわつく兵らにビビは毅然とした態度で声を上げる。
「チャカの元へ案内しなさい!やって欲しいことがあるの」
「はっ!ただちに!」
先程までの警戒が嘘のように水琴達は速やかに宮殿へと連れていかれる。