第62章 ここにいる意味
「水琴さん!」
「遅くなってごめん、ビビ!」
「いいえ大丈夫。ここまでくればMr.2だってさすがに追っては……」
「ナ~~マイキなのよう!カルガモ!!ビビを渡しなさいよう!!」
ビビの言葉を遮るようにMr.2の声が響く。
そっと下を覗けばつま先を壁に突き刺すようにして駆けあがってくるMr.2の姿があった。
「オカマに不可能はないのよう!オカマケンポー”血と汗と涙のルルヴェ”!!」
「なにあれ気持ち悪い!!」
水琴が生理的嫌悪を覚えている中ビビは目の前に広がる光景に言葉を失くしていた。
目の前で繰り広げられるのは命の奪い合い。
大切な国民が、兵が。銃を、剣を取り互いに傷つけあっている。
ビビの頬に誰かの血が飛び濡らした。
足元に反乱軍の一人が血だらけになって倒れ込む。
無意味な殺し合いが起こってしまったことに、ビビは言いようのない憤りを覚えた。
「ビビ」
呼ぶ声に顔を上げれば仲間の姿。
そうだ。まだ立ち止まるのは早い。
「……カルー。この戦場を抜けられる?」
止まるのは全てが終わった後でいい。
「反乱軍は、まだ町の中心部には届いていないわ。……チャカを探すの。宮殿へ行って!」
「クェ~~ッ!!」
自らを鼓舞しながら戦場へと駆けだす。
「追~~いつ~~いたわよ~~~う!!」
ちょうど壁を登り切ったMr.2が躍りかかってきた。
それを水琴は風で阻む。
「ちィ!!邪魔なんだから小娘っ!!」
「ビビ、背後は任せて!!」
頼りになる水琴の声にビビはひたすら前だけを見る。
このまま戦場を駆け抜けられるかに見えた。
びくりとカルーの身体が震え、前に揺らぐ。
「流れ弾が!カルー!」
「___ッ」
ビビの悲鳴にカルーは崩れかける足に力を籠める。
血を流しながら、それでもカルーは変わらぬ速度で戦場を駆け抜けた。