第62章 ここにいる意味
カルーの背にまたがりビビはまっすぐ門を目指す。
「逃ィ~~がさないっつってんのよ~~う!」
「!!」
背後を振り返ればカルーにも劣らない俊足で追いかけてくるMr.2がいた。
水琴とエースの姿は見えない。
「……っ」
彼らに限ってやられてしまったとは考えられない。何かに足止めされていると考えるのが妥当だろう。
安否を気にする必要はない。ビビが心配しなければならないほど水琴もエースも弱くはない。
今心配しなければいけないのは自分のことだとビビは再び前を向く。
「降ろしてカルー!戦うから私!」
このまままっすぐ行けば階段で追い込まれてしまう。
それならば少しでも時間を稼ぎ水琴達が追いついてくれるのを信じるしかない。
そう思いカルーに声を掛けるがカルーは止まらず、そしてまっすぐ進むこともなく方向を変えた。
「えっ?待って、そっちは壁……!」
頭上高くそびえる壁に向かいカルーは駆ける。
衝突する、とビビは咄嗟に目を瞑った。
ダンッ!!と力強くカルーの足が壁を蹴る。
そしてそのまま上り始めた。
「ナニあのカルガモ、このアルバーナの絶壁を……!」
追いかけていたMr.2もあまりのことにあんぐりと口を開ける。
だがあと少しで頂上というところで失速し、カルーの足が壁から離れた。
「がーっはっはっはっは!バカねいっ!
さァ、落ちてきなさい!オカマケンポーの餌食に……」
獲物を待ち構えるMr.2の横を風が駆け抜けていく。
「カルー!諦めないで!」
水琴の声と同時にカルーの背を風が押した。
渾身の力を込めてカルーは両手をはばたかせる。
風をその羽に受け、カルーは空を飛んだ。
「すごい…!カルー、あなた今、空を飛んだわ!」
歓声を上げるビビの目に水琴の姿が映る。