第9章 白ひげクルーとの日常 5日目
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明け方、まだ寒い甲板に水琴は足を運ぶ。
ふわ、とあくびが出た。
昨夜は遅くまでサッチと作業をしていたので眠い。
別に二度寝しても良かったのだが、なんとなく水琴は寝付けずベッドから抜けだしていた。
まだ暗い海に一筋の光が覗く。
「…そう言えば、朝日見るの初めてかも」
最初は点だった白い光は徐々に帯状に広がっていき、海と空の境界を染めていく。
光に照らされ群青は徐々に明るい青へと姿を変えていき、夜空に光り輝いていた星は役目を終えたとばかりに白に溶けていった。
海面には光の宝石が散らばり波の狭間でその存在を主張し始める。
「綺麗………」
世界を朝に塗り替えていく太陽をじっと見つめる。
そして同時に太陽のような笑顔を思い出した。
「エースさん……」
元気かな、と音にせず呟く。
エースもこの海のどこかでこの朝日を見ているだろうか。
それともまだ寝ているだろうか。
会いたいな、と思った水琴の視界に小さな影が見えた。
それは段々とモビーへ向かい大きくなってくる。
「………え」
見覚えのある小舟に水琴は目を丸くする。
「エースさん?!」
間違えようもないエースの姿に思わず声を張り上げる。
向こうも水琴に気付いたのか、大きく手をひと振りするとモビーの陰へ消えていった。
ストライカーを置きに行ったのだろう。様子を見ようとエースが消えていった方へと甲板を駆ける。
手摺から覗きこもうとした時、甲板へふわりと見慣れた姿が降り立った。