第60章 目指せアルバーナ
「何もないけど……、っ?!」
訝しむ水琴の目の前に突然二つの柱が地中から躍り出る。
いや、それは柱ではなかった。
よく見ればそれは柱にしては柔らかく、植物のようなしなやかさを持つ。
そして、そのてっぺんには大きく膨れた目があった。
巨大な目と水琴の目が合う。
「ひ…っ?!」
悲鳴を上げる前に水琴の下の地面が大きく盛り上がる。
揺れる地面に膝をつけば、流れ落ちる砂から覗くのは地面ではなく固い殻のような表皮だった。
「これ…カニ?」
ようやく全体像が見えた水琴は呆然と呟く。
「マツゲの友達だって」
「これが?!」
哺乳類と甲殻類がなぜ友達なのかとか、なぜ砂漠にカニなのかとか、突っ込みどころはたくさんあるがとりあえずは一つ。
「…なんで脱がなきゃいけなかったの?」
「こいつエロイんだって」
「…うん、分かってた。多分そうだと思った…」
こちらにじっとりと向けられる視線が雄弁に物語っている。
その視線から隠すように水琴は素早く上着を身に着けた。明らかに目がしょんぼりとするが知ったこっちゃない。
「さ、行こうチョッパー!」
「おう!」
無事に移動手段を手に入れた二人はヒッコシクラブに乗ったまま急いで町へと帰る。
チョッパーの鼻と水琴の風で仲間の位置の見当をつけると合流するためそこへ向かう。