第59章 ギャンブルの町
「ぐ……」
「強い……」
絡まり踊るように揺れる炎と風は路地を突き進んでいく。
と、進む前方で海兵が吹き飛ぶのが見えた。
「サンジ!」
「お、水琴ちゃんとエースじゃねぇか」
無事だったか、よかったと安堵の表情を浮かべる様子にやはり彼らも追われていることを悟る。
「一体何があったんだ?」
「それがルフィとウソップがあの煙野郎に見つかってな。とりあえず散り散りになって巻いてからあの中央のカジノで落ち合う手はずになってる」
「あの馬鹿弟……」
昔から変わらないトラブルメーカーっぷりにエースは思わず重い溜息を吐いた。
「まぁまぁ分かってよかったじゃん。とにかく急ごう?」
このあたりの海兵はほぼ潰せたようだ。静かになった路地を三人は進んだ。
***
「ビビと海賊どもがこの町に…?」
「えぇ、ミリオンズから連絡が」
「クハハ…わざわざこの町に来るとはな」
オールサンデーからの知らせにクロコダイルは低く笑う。
「海賊の中には火拳と異世界の民がいるようです」
「何……?」
このあたりで聞くはずのない名に眉を顰める。
「白ひげが一体何の用だ」
「さぁ。ですがビリオンズの船を沈めたのは火拳という情報も」
「……?」
思ってもみない乱入者に顎をさする。
白ひげは己の領土のために隊や傘下の船を向かわせることはあるが、わざわざ新世界の海から領土ですらないこの国を守りに来るとは考えづらい。
となれば居合わせたのはただの偶然か、それとも…
「どうしますか?」
「……“今”白ひげの奴らと事を争う気はねェ…が、邪魔するというなら話は別だ」
いるのが火拳だけとなればアレさえ手に入れば造作もない。
異世界の民もいるというのなら好都合でもある。
一年半前その存在を確認されて以降多くの海賊と能力者が手に入れようと水面下で動いたが、白ひげの庇護により決して表舞台へ立つことのなかった存在が、今目と鼻の先に”ある”。
流れが自分に向いているのを感じ、クロコダイルは口の端を上げる。
「マヌケな鼠どもを迎えてやれ……」