第59章 ギャンブルの町
日が落ち始める頃を見計らいユバを出る。
日中焼けるような暑さだった砂は少しずつ温度を下げつつあった。
完全に暗くなる前に少しでも進むため水琴は気合を入れ帆を張った。
「水琴さん、大丈夫?」
「しっかり休んだから大丈夫。それよりもみんな、振り落とされないように気を付けてね!」
水琴の生む風により砂ぞりは力強く前へと飛び出していく。
その旅路は一見順調かに見えた。
「あ゛~~~~……」
風を受け多少ましとは言っても暑いことには変わりない。
十分な水分を補給できなかったこともありルフィたちは出発早々ばてていた。
「暑い……」
普通の人間でもそうなのだから風人間の水琴は余計そうである。
じりじりと照り付ける太陽を恨めし気に見上げる。
「暑い暑い言ってるから余計暑く感じるんだろ」
そんな水琴に一人だけ補助として砂ぞりに乗り込んでいたエースが飄々と返した。
「炎人間のエースに言われたくない。暑さなんて感じてないくせに!」
「おれだって気温の変化くらい分かるぜ?」
「分かるだけで暑いなんて思ってないんでしょ?」
「まァなー」
涼し気なエースの表情が憎たらしい。
これで極寒の地ならばどうかといえば、身体が炎のため多少の寒さなど無問題だ。
風人間で気温の影響をもろに受ける水琴からすれば羨ましい限りである。
前方で行われるやり取りを見つめていたビビはそっと隣のルフィに目をやる。
大分暑さが堪えているのか、そりの縁に頭を乗せぐったりとしていた。
「ルフィさん…ありがとう」
「はぇ?」
「私じゃとてもこんな決断下せなかった」
クロコダイルを倒すだなんて。
反乱を食い止めるよりもずっと難しいことをルフィはさらりと言い切った。
「……メシ」
「え?」
「クロコダイルぶっ倒したら、腹いっぱいメシ食わせろよ」
暑さに弱りながらもルフィはただ前だけを見ている。
「……えぇ、約束する」
それに応えるビビの笑顔は、今までで一番晴れやかだった。