第58章 ユバ
遠ざけるのはビビの優しさだ。
私たちが必要以上に傷つかないように。
全部一人で背負って、どうにかしようとしている。
それが悲しい。寂しい。
「……ったく」
「うわっ?!」
乱暴に頭を撫でられる。
ぐわんぐわんと左右に揺すられる視界に何すんの!と抵抗を試みればあっけなくその腕は外れた。
「いきなり何?!」
「ちったァおれ達の苦労が分かったかよ」
「おれ達…?」
「今のお前のセリフな。全部まとめてお前に返す」
「はぁ?」
「忘れたとは言わせねェぞ。お前、異世界の民ってばれてあの変態科学者に捕まった時、なんて言った?」
指摘され水琴は思い出す。
確かにあの時私は白ひげのみんなに迷惑を掛けたくなくて、嘘をついて遠ざけた。
「…あれとこれじゃ、スケールが…」
「違うけどな。やってることは大して変わらねェよ。
お前も、王女様も」
確かにそうかもしれない。
きまり悪く視線を明後日の方へ向ける。
「……あの時のお前と一緒って思えば。
何してやればいいかわかんじゃねェの」
「え……?」
「あの時、おれはお前になんて言った?」
__おれ達を舐めるな。
__絶対に助ける。
もう放っておいてくれと。
怒りとともに吐き出した水琴にエースはひるむことなくそう言い切った。
「…そっか。そうだね」
ビビが求めてくれないのなら。こっちから差し出せばいい。
彼女から手を伸ばせないなら、無理やりにでもその手を取って、分からせてあげればいいのだ。
___あなたの味方は、ここにいると。