第58章 ユバ
砂漠の旅に備え空いている宿を借りルフィたちは中へと引っ込んだ。
日を遮られるだけで身体の疲労も随分と違う。
「お前は休まないのか」
日陰に腰かけ町を眺めていればエースが砂を踏み横に座る。
「うん…ちょっと考え事を」
「考え事?」
「ねぇエース。この国はいいところだね」
砂漠は厳しく、生きていくのは大変かもしれないけれど。
王族も、民も、心から国を愛しお互いを想い合っている。
「ビビもさ。すごいよね、まだ十六歳なのに国を背負って、民を守ろうとこんな所まで…」
十六歳という年齢がこの世界では決して子どもでないということは分かっている。
それでも一国百万人の命を背負うには、その肩は十分というわけではないだろう。
それでも彼女はひるまない。
「ビビは優しいから。きっとみんな守ろうとする。
民だけじゃない、私たち海賊だって。
……でも、じゃあビビのことは誰が守るのかな」
ここまでの旅路で、ビビは決して涙を見せなかった。
苦しむ民を想い、それでいて自分の苦しみは見せない。
「……私は」
ビビの姿を思い浮かべながら水琴は胸に秘めていた気持ちを少しずつ吐き出していく。
「ビビがそうやって一人傷つくのが、見ていられなくて。
…何かしてあげたいのに、ビビは必要としてくれなくて。
__それが、なんだか悲しくて」