第58章 ユバ
「お。なァビビ。もしかしてあれがそうか?」
途中休憩を挟み二時間が経とうという頃。エースの指さす先に黒い影が見えた。
ビビが顔を上げその影を確認する。
「えぇ、そう。ようやくたどり着いた…」
ホッとするビビの視線の先に目をやる。
まだ遠いが、あれならばあと三十分程度でつきそうだ。
眼前に迫るゴールに水琴も心が浮き立ち風を操るのにも力が入る。
「……?」
と、違和感を感じ水琴は首を傾げた。
吹く風がやけに乾いている。
ここは砂漠だからそれは当然だが、その変化は突然のように感じた。
まるで今まさに大気中の水分を奪われたような…
「あ……っ?!」
原因を探ろうとした意識はビビの驚く声に持っていかれ、水琴は前方を仰いだ。
そしてその原因を知る。
「あれは……!」
「砂嵐?!」
もうすぐそこに見えていたユバを突如現れた砂嵐が襲っていた。
突然の自然災害に水琴は砂ぞりを止める。後ろに乗っていた面々も唖然としてその光景を見ていた。
「……っ!!」
「あ、ビビ?!」
一番最初に動き出したのはビビだった。
砂ぞりから飛び降り砂嵐の中心に向かって駆け出す。
「待てビビ!」
その腕をゾロが掴み引き止めた。
まさか突っ込もうとは思ってなかっただろうが、砂嵐はいつ何時その方向を変えるか分からない。
これ以上近づくのは危険だった。